430 Kings Road 1971 - 1980
1960年代後半のロンドンで最も人気のファッションといえば、ヒッピー・ムーブメントでした。しかし、若き日のヴィヴィアン・ウエストウッドやマルコム・マクラーレンにとってこれらは退屈なトレンドで、むしろ反逆的な生き方や典型的な1950年代らしい衣服や音楽、骨董品といったものに興味を惹かれていました。
そして当時マルコムのためにテディ・ボーイズのカルチャーを反映した衣服を制作していたヴィヴィアンは、ロンドンのチェルシー地区キングスロード430番地に小さなブティックをオープンし、「Let it Rock」と名付けました。1971年のことです。
その1年後、ヴィヴィアンの次の興味はバイカーの衣服やジッパー、レザーに移っていました。これに伴ってショップもスカルとクロスボーンのデザインに一新し、店名を「Too Fast to Live, Too Young to Die」と改めました。ヴィヴィアンとマルコムはそこで挑発的なスローガンをプリントしたTシャツをデザインし始め、その結果1959年に成立した猥褻出版物法により起訴されることとなります。これに対して、二人はショップを再ブランディングし、更にハードコアなデザインのTシャツを制作し対抗しました。
1974年には「オフィス用ラバーウェア」というスローガンを掲げ、「その時、英国で流行っている何ものでもない」店として店名を「Sex」に改名しました。
2年後、マルコムがマネージメントする人気バンドSex Pistolsの楽曲「God Save the Queen」がチャート1位を獲得したにも関わらず、BBCに放送を拒否されました。
この時にはショップ名を「Seditionaries」と改名し、ボンデージのストラップやジッパーといった当時は明確な定義を持たなかった性的フェティシズムのシンボルをD.I.Yによりファッションへと美しく変貌させたのです。この時、これを評したマスメディアは「パンク・ロック」と命名しました。
セックス・ピストルズの解散、そしてパンクの大衆化により、ヴィヴィアンはそれまでの興味を失います。そして1980年に再びショップを改装し、この時に現在も続くショップ「Worlds End」が誕生しました。
ショップの地下はかつてレストランでしたが、ストックルームとスタッフ用の設備を拡張するため、最終的に「Worlds End」の一部となりました。ショップはオープン以来そのコンセプトを変えておらず、インテリアを2017年に修復している以外、すべてのディテールは40年前にヴィヴィアンとマルコムがデザインしたそのままの状態で残っています。