セックス・ピストルズの伝説のアルバム、「アナーキー・イン・ザ・UK」が1976年の11月にリリースされて40数年が経ち、2016年にはパンクカルチャー誕生40周年を記念して、ロンドンではパンク・ロンドンと評され、ロンドン市長や英国図書館がスポンサーとなり、コンサートや展示が1年間にわたり開催されました。
また、ファッション界では、世界の名立たるブランドがパンクルックを使ったコレクションを展開しました。では、そもそもパンクとは一体何だったのでしょうか?
ヴィヴィアンは自身たちが起こしたパンクをこう描写しています。
「私とマルコムがパンク・ムーブメントをしたのは、当時のエスタブリッシュメント(社会的に確立した体制や制度)に対する反対勢力を立ち上げるためでした。しかし最終的には、それについて来た若者たちは、モヒカンだったり破れたTシャツを着たりする、パンクというルックスだけを追うようになってしまったのです。エスタブリッシュメントに反対するという本来の目的が失敗に終わったパンク。失敗のムーブメントになりました。それで私たちはすぐにパンクをやめて、次にパイレーツ・ルックをしました。パイレーツのエネルギーが、イギリスという島からどこか遠くへ連れ出してくれると思ったからです。」
その2016年11月に、パンク真っ只中にパンクな人たちに囲まれて生活していたヴィヴィアンとセックス・ピストルズのプロデューサーであるマルコム・マクラーレンの息子、ジョー・コーレが、このパンク40周年記念のお祭り騒ぎに反対して、自分のパンクコレクションを全部燃やす、バーン・パンク・ロンドンというイベントを開催しました。
アルバート・ブリッジ近くのテムズ川で、Extinction(絶滅)と書かれたボートに乗ったジョーが、イギリスの首相や旧市長で旧外務大臣の政治家のお面をつけた人形に自身のコレクションを着せ、次々に火を点けていきました。このジョーの行動に対して、コレクションを美術館に寄贈してはどうか、なぜコレクションを売ってチャリティーに寄付しないのか、など多くの反対の声が上がりました。しかしジョーは、そのような意見をこう覆しました。
「そもそも当時はパンクのTシャツを着ているだけでも補導された、それくらい過激なTシャツを、どの美術館が飾りたいなどと思うのか。パンクとは、エスタブリッシュメントに反対する運動であって、コレクターがその当時の服を集めるなどといった、そんな物ではない。メインストリームが支援するというだけでおぞましい。チャリティーに寄付しろと言うが、それではパンクルックを使って今回コレクションをした一流と言われるファッション・カンパニーは、自分たちの売り上げをチャリティーに寄付するのか?しないだろう。現代のパンクが誰かと聞かれたら、それはジュリアン・アサンジしかいない。」
テムズ川のボートの上ではジョーがコレクションに火を点け、対面する路上のダブルデッカーではヴィヴィアンがマイクを持って、腐敗した金融システムからグリーン・エネルギーへ転換することをイベントの鑑賞者に訴えました。
そしてさすがこの親子、区から許可を得ずに行ったこのイベントで、最後には警察と消防車が数台集まり、まさにカオスの中のパンクで幕を閉じたのでした。
皆さんは今回のこの件をどう捉えますか?Are you a punk?