今ファッション業界では、エシカル(倫理的)でサステイナブル(持続可能)であることが重要視されていますが、ヴィヴィアン・ウエストウッドももちろんそうです。
ヴィヴィアン・ウエストウッドとエシカル・ファッション・イニシアティヴは、アフリカのケニアの女性たちの生活の向上を目標に「Not Charity, Just Work(チャリティーではなく仕事)」をスローガンに、バッグや小物類の製作をこの7年間共にしてきました。
一際目立つそのバッグは『アフリカバッグ』と呼ばれ、本国イギリスのみならず、日本でも人気なのです。ヴィヴィアンはアフリカバッグに携わる人たちとその環境を見るため、国連のエシカル・ファッション・プログラムと、バッグや小物類を製作しているケニアのナイロビとセゲラに10日ほど行った時のことをこう言っています。
「このプログラムは環境的に持続可能な物を使い、その過程を経て、貧困から地域社会を向上させることです。プロジェクトチームのアイディアで、私たちのデザインをローカルの熟練した職人たちに持って行き、魅力的なファッションアイテムを世界市場に向けて彼らが製作できるようにしました。
仕事の合間にNGOやチャリティーによって支援されているナイロビのスラムも訪れました。とても小さなコンクリート住宅の家賃が安くないことに驚かされました。スラムにも社会的構造と経済が存在するのです。住宅の家賃は店や仕事場の2倍です。人々は健康的ですが寿命は平均以下とのこと。定期的に飛行機で運ばれてくる廃棄処分された食べ物やゴミは、スラムに住んでいる人達にとっては需要な収入源なのです。
赤道に近いセゲラでは、ビーズ作業が得意な部族の人達が持続可能に暮らして行けるよう、アクセサリー作りに携わってもらっています。
私はこの国連のプログラムが、人々の生活に本当にポジティヴな効果を与えてくれると信じています。」
バッグの製作は、生地はケニアやアフリカ各国のものを、ライニングには主にメンズの古着のシャツを利用します。ウエストウッドのロゴのオーブや、留め金となる金具部分には水道のパイプを溶かして再利用するなど、エシカルでサステイナブルであることが重要です。また、それぞれの地域にスペシャリストが育つよう、一地域に一つのことに集中して仕事をしてもらい、働く女性のスキルの向上も目指します。
例えばビーズ作業は、ビーズで有名なマサイ族の地域に。他にプリントだけに従事する地域、縫製だけに従事する地域と、仕事を地域別に特化します。1期目のコレクションから順にバッグを見て行くと、彼女達のスキルの向上が明らかに分かるでしょう。
このプロジェクトに初めから携わっている バッグデザイナーのキャトリンからこんな話を聞きました。
「ウエストウッドのデザインはセクシーで過激なものが多いため、女性がそのデザインに働くことに反対する男性も多いのです。そのため、初めにデザイン画を見てもらい、そこで仕事をしたいかどうかを決めてもらいます。ただ、男性の心配とは裏腹に、セクシーでインパクトの強いデザインを、働く女性はより好み、その作業をとても楽しんでいます。」
ひとつひとつ手に取っただけで想像できる、アフリカの真っ青な空に赤い土、そして何より働く女性たちの笑顔がこぼれるアフリカバッグを是非ご覧下さい。