2014年、アメリカのラッパー、ファレル・ウィリアムスがグラミー賞で着用して、またしても一躍大人気となったマウンテン・ハット。このフェルト地のオーバーサイズの帽子は、横からも上からもボコボコにされたようにユニークに形取られています。この帽子は、1982年3月24日、ロンドンのケンジントン・オリンピア、ピラー・ホールでのショー「ノスタルジア・オヴ・マッド」で披露されて以来、ウエストウッドの原点でもある、ワールズ・エンド・ショップの定番のアイテムです。
このコレクションは、くるりと回ると円を描く膝丈のスカート、ショートジャケット、身を包んだり、たまには物を運ぶのにも便利なブランケット、そしてフェルトの帽子、というペルーの女性の民族衣装にインスパイアされたものでした。また、コレクションの裏にはマルコム・マクラーレンがイメージしたこんなストーリーも隠されていました。
全身「ノスタルジア・オヴ・マッド」に身を包んだ北部に住む先住民のギャングたちが、夜になるとハドリアヌスの長城を登ってイギリスのナイトクラブにやって来る。色んな格好をした面白い人たちがいる中で、そこでは彼らが最もスタイリッシュに見える。そして朝方、ナイトクラブにいた人たちが、このスタイリッシュな人たちは誰だったんだと不思議に思う中、彼らはまた長城を登って北部へと消え去って行く、というストーリーです。
35年以上の時を超えても人々を魅了し続けるマウンテン・ハット。作られた当初はヴィヴィアンの、またはマルコムのストーリーがそこにはありましたが、長く愛されるその帽子には、今では愛用し続けるその人それぞれのストーリーがあるのではないでしょうか。